これまで、自分らしく生きることの強さを歌い続けてきたIS:SUE。その彼女たちが次に届ける曲は、強さと表裏一体である弱さをさらけ出したドラマティックなバラード『コエ』。自分の気持ちが溢れそうになった瞬間、自分の弱さと向き合いながらも、未来に抱く希望を歌うこの曲について、じっくりと話を聞いた。
――『コエ』はm-floの☆Taku Takahashiさんとなりますが、どのような経緯で楽曲提供に至ったのでしょうか。
NANO 以前に私たちがm-floさんの『come again』をカバーさせていただいた時の動画を見てくださったことをきっかけに、いつかIS:SUEとして改めてご一緒できる機会があったらとチームで話していたところ今回のドラマのお話をいただき、プロデュースを手がけていただけることになったんです。ご本人にパフォーマンス動画を見ていただいただけでも光栄だったのに、楽曲提供までしていただいて、すごく嬉しかったです!気合いが入りました。
“声”だけでアイデンティティを伝えるために
もっとステップアップしないといけないと思いました(YUUKI)
――最初に『コエ』を聴いたときの感想を教えてください。
NANO IS:SUEとしてバラード曲を今まで歌ったことがなかったので、新たな挑戦だと思いました。そして、普段私たちの曲は英語のフレーズも多くなっているのですが、今回歌詞がすべて日本語で、そこも新鮮でした。詩的で1つ1つの言葉がものすごく心に響いてきたんですよね。
YUUKI 私も、最初に聴いた瞬間に、メロディと歌詞が心にグッと来て感動したんです。タイトル通り、“声”だけでアイデンティティを伝えるために、私たちもステップアップしないといけないとも思いました。
RINO この曲は5分間という、今までのIS:SUEで一番長い曲なんです。自分の中ではその5分間に、どんな想いを乗せていこうという楽しみもありましたし、全部日本語だからこそ、聴いている方にどうやって伝えていこうかなど、どんどん想像力が膨らんで、パフォーマンスするのがものすごく楽しみになりました。
自分の気持ちが溢れそうになっていることを、周りに気づいてほしいからこそ“壊れてもいいかな”“笑わなくていいかな”と疑問形になっていると思うんです(RINO)
――この『コエ』は、これまで一貫して“強さ”を歌ってきたIS:SUEが、“弱さ”を歌う歌詞がとても印象的ですが、心に刺さった歌詞のフレーズを教えてください。
RINO この曲は、遠回しではなく、ストレートに自分の奥底にある弱さや孤独を歌っていると思うんです。なかでも、サビの“壊れていいかな”“笑わなくていいかな”というフレーズは、どこかで自分の気持ちが溢れそうになってしまっていることを周りの人達に気づいてほしいからこそ、疑問形になっていると思うんですよね。そういった、誰かに認めてほしかったり、誰かに寄り添ってもらいたかったりする気持ちって、もちろん私にもあるからこそ、その感情を思い出しながら、歌っていきました。それに、私が担当している歌い出しの「“ちゃんとしてるね”って言われるたび/無理してた自分が剥がれてく」というフレーズは、バックサウンドがピアノのみということもあり、はじめから歌声をダイレクトに届けるつもりで、より気持ちが伝わるように、歌詞というよりも、セリフのように、聴いてくれる方を思い浮かべて語り掛けるような感覚で歌っていきました。
――弱さを表現するための歌い方は、今までの強さを歌う歌い方とは変わりますか?
RINO そうですね。これまではIS:SUE=異種という名前の通り、“異なっていても大丈夫、It’s OK!”とパワフルに背中を押すような曲が多かったんです。でも、この曲は自分の弱い部分にフォーカスされているからこそ、感情を重視して、レコーディングでも小さな息遣いやディティールにこだわって歌っていきました。
YUUKI 私は今まで、IS:SUEとして自分に自信がある女性像、みんなが憧れるアイデンティティを持った女の子たちの曲を歌う時に、うまく表現しきれているだろうかと不安になることもあったんです。でもそんな、本当は強いわけじゃない自分が、強くありたいと思う気持ちをIS:SUEの歌やダンスで表現することで伝わるメッセージがあるんだというのを、先日のファンコンサートでも実感して。たくさんのREBORN(IS:SUEのファン総称。読み:リボン)を前に、胸がいっぱいになりました。この曲はそういう、自分の感情にすごく近いような、寄り添ってくれる歌詞が印象的で、心の底から共感することができたんです。そのせいか、すごく自然体な自分で歌うことができたような気がします。
どんなに辛くても、未来を見ている。
そんな歌詞が大好きだからこそ、希望を大事にして歌っていきたい(NANO)
NANO 全体を通してみると、孤独や行き場のない気持ちを歌っているのですが、曲の最後には、どこか光が差し込むような表現の言葉が使われているんです。どんなに辛いことがあっても、未来を見ている。そんな歌詞がすごく好きですね。この曲では、その最後の希望をしっかりと大事にして歌っていきたいです。
――みなさんが弱さと向き合った時は、どのように乗り越えていますか?
NANO わたしは辛いことがあった時は、もちろん逃げたくなることもあるけれど、その気持ちととことん向き合うようにしています。そしてそんな時は、なぜ自分は今辛いのか、悲しいのかを整理して、母に話すようにしていて。私の母はものすごくポジティブなので、どんなことも、前向きに変換してくれるんです。そのおかげで、すごく心が軽くなるんですよね。今思うと、私のポジティブ思考な性格も母譲りなのかもしれません(笑)。
――とくにNANOさんは、太陽のような明るいパブリックイメージがあるからこそ、抱えてしまうことも多いのではないですか?
NANO そう思っていただけることは、すごく嬉しいんです。以前は辛くなったときに、その気持ちを無視して、“明るくいなくちゃ”って思う時期があったんですよね。でもそうやって、自分の気持ちに蓋をしていたら、どんどん辛くなってしまうことに気づいたので、無理をせずに、信頼できる人に話して、心の整理をすることがすごく大事だなって思えたんです。もちろん、直接REBORNのみなさんに笑顔が好きだと言ってもらえると、もっと頑張ろうって思えますし、今は無理して明るく振る舞うことはないので、安心して欲しいです。それに、そういった経験があったからこそ、この曲を今心から歌えていると感じています。
RINO 私は以前、自分の弱さに気づいたり、辛くなったときは、考えないようにしたり、違うことに集中したりと現実逃避をしていたんです。でも、今NANOちゃんが言っていたように、見ないふりをしていた辛いことって、大きくなって自分に後から跳ね返ってくるんですよね。なので、小さな気づきの瞬間に解決しないとダメだって気づいたんです。そのために、自分なりの方法としては、見聴きした言葉の中でハッとしたものを書き留めるようになりました。今は、「挑戦して失敗したら経験にすればいいし、成功したら自信にすればいい」という言葉を大事にしています。この言葉に出会ってからは、失敗したとしても、自分の糧にすればいいと思えるようになったので、新しい挑戦がしやすくなりました。
YUUKI 私もRINOちゃんと同じで、ちょっとしたストレスを溜め込む傾向にあったんです。それに、平和主義者なので、何か思ってもあまり言わなかったり…。でも、自分の心と向き合わないと爆発してしまうこともだんだんわかってきたので、素直になることはすごく大事だと思うようになりました。以前から、人の目や顔色をうかがって行動する部分もあるんですが、それって自分には何のためにもならないことにも気づいたんです。なので、いまは、自分が何をしたいかと考えるように、良いことも悪いことも、自分と向き合うことを意識しています。
――強いIS:SUEが、弱い部分を見せることができたことで、よりみなさんを近くに感じるREBORNも多いと思います。この曲がどのようにみなさんの心に寄り添ってもらえたら嬉しいですか?
RINO REBORNのみなさんが、私たちに対して強さを感じてもらっているように、私たちも憧れのアーティストに“この方々のメンタルは鋼なのかな?”って思うこともあるんです(笑)。でも、絶対にその方たちにもきっと人に見られたくない弱い部分や、奥底に込められた孤独を感じる部分があると思うんですよね。なので、“なんで自分だけ”と責めずに、みんなにも弱いところはあるんだと近くに感じてもらえたら嬉しいですし、私たちもその想いがストレートに届くようにパフォーマンスを届けていきたいですね。
YUUKI 私自身、自分の気持ちの表現方法が分からなかったり、今の気持ちが整理できない時に、音楽を聴いたり、映画を見たりすることで気分が晴れたり、そこで自分の本当の気持ちに気づいてハッとすることがあるんです。この曲も、日々を過ごす中での助けになってもらえたらいいなと思っていて。悩んだり、辛い時にもこの曲を聴いて、少しでも光を感じてもらえたら嬉しいです。
NANO この曲には、“声にならない想いだって/誰かの心 揺らすかもしれない”という歌詞があるんです。いま、自分の気持ちを素直に声に出せない状況にあったり、出すことに不安や怖さがある方にも、この曲を聴いて辛い気持ちをそのままにせず曝け出して、少しでも心が軽くなってもらえたら良いなと思います。
――この曲のタイトルは“コエ”となりますが、バラードを歌うことで自分の声や歌に関して気づいたことはありましたか?
NANO 今まではアップテンポの曲が多かったので、リズムに乗って歌うことを重視していたんです。でも、この曲は歌詞を表現して、伝えるということを意識して歌いました。
――NANOさんから見て、RINOさんYUUKIさんの歌声はどう感じましたか?
NANO RINOの歌声は、本当にバラードが似合うんですよ。今回もRINOの実力が最大限に発揮されたように思います。普段からものすごく上手なんですが、この曲では感情表現が本当にリアリティがあって、“REBORNのみんなが聴いたら泣いちゃうんじゃないの⁉”ってレコーディングした声を聴いて思いました!
RINO 嬉しい~!
NANO YUUKIは私の中ではRapのイメージが強かったんですが、YUUKIの声の魅力を証明出来たんじゃないかなと思います。この曲はRapがないので、YUUKIはプレッシャーだと言っていたんですが、ものすごく上手ですし、声質的に、切ないパートがものすごく似合うんです。ラストのサビの入りをYUUKIが担当しているんですが、その表現がものすごく良くて、YUUKIが歌ってくれたことで完成度がグッと上がったんです。
YUUKI ありがとう~! 私自身、最初はすごく緊張していたんですが、今回レコーディングの順番が私は一番最後で、ふたりの声が入った音源を聞いた時に、ものすごく気持ちが伝わって来て、歌いきることができたんです。最初にRINOちゃんが歌うパートでこの曲の世界観にグッと引き込まれますし、NANOさんの胸が張り裂けそうになるようなパワーのあるボーカルがあって、とっても素敵な曲になっているので、耳が幸せになりました。
RINO みんなの声が入った音源を聞いた時に、心の底にある悲しさと、強さが混じった感覚を覚えたんです。息遣いを含めて、じっくりと聴いてもらえたら嬉しいですね。
――この曲は、ドラマ『恋愛禁止』の主題歌にもなっていますね。
YUUKI このドラマの主人公である“瑞帆”は、衝動的に元恋人を殺してしまい、本当の気持ちを誰にも言えない運命を背負って生きていく人なんです。私のパートで、「スクロールする指にだけ感情が置き去りになっていく」という歌詞があるんですが、ドラマの中で、瑞帆も自分が人を殺してしまったことがバレていないか震えながらスマホをスクロールしているシーンがあって、映像と一緒に見聞きするとまた色んな解釈ができて臨場感たっぷりでした!
RINO このドラマで表現されているいろんな形の愛ゆえの後悔や痛み、愛によって人を動かす強い力などもこの曲の歌詞に込められているので、物語と深くリンクしているんです。
NANO 毎回どのタイミングで流れるのかなとドキドキしますし、エンディングでこの曲が流れたときに、「来週が楽しみ!」って気持ちになるんですよね。よりドラマを盛り上げられるような曲になってくれたら嬉しいです!
――最後に、この曲を聴いてくれる皆さんにメッセージをお願いします。
RINO 誰しも人に言えない部分や、思い悩む部分はあると思うんです。それを優しく包み込んでくれるような、隣にいてくれるような曲になっているので、聴いてくれたみなさんにとって、“あなただけじゃないよ”と支えらえるような曲になってくれたら嬉しいです。これからも私たちの「コエ」で、大切に想いを届けていきたいと思います。
IS:SUE (イッシュ) 'コエ prod.☆Taku Takahashi (m-flo)' Track Video
生まれつき、強い人間はいない。たとえ強く見えたとしても、その強さは、様々な弱さや、高くそびえる壁を乗り越えた経験から生まれたものだろう。彼女たちは、これまでの多くの経験や、挫折、そこで得た気づきがあるからこそ、こんなにもこの曲に説得力を与えることができたのかもしれない。そして今も、たくさんの弱さに目をそらすことなく、しっかりと向き合い続ける彼女たちが届けるこの『コエ』に込めたメッセージを、じっくりと受け取ってほしい。